○岩沼市中小企業・小規模企業振興基本条例

令和2年3月9日

条例第1号

本市は、古くから街道と阿武隈川の舟運が交わる交通の要衝であり、文人墨客をはじめ多くの旅人が訪れる宿場町、そして竹駒神社の門前町として栄えてきた。近年においても、国道4号・6号及び東北本線・常磐線の合流点であり、仙台空港が所在するなど交通の便の良さに加え、雪の少ない温暖な気候であることから、多数の企業が進出し商工業都市として着実に発展してきている。

東日本大震災では、壊滅的な被害を受けた企業が多かったが、互いに支え合い、行政などと連携することで、多くの企業が比較的早期に事業を再開している。

こうした商工業都市としての発展及び被災からの事業再開に大きな役割を果たしたのは、本市の事業者の大部分を占める中小企業・小規模企業である。中小企業・小規模企業は、これまで雇用確保や人材育成に努めるなど地域経済の成長に寄与してきた。また、そこで働く人々は、地域活動を通じて社会、文化及び伝統を支え、まちづくりの担い手として地域の発展に大きく貢献してきたことから、本市が持続的に発展していくためには、中小企業・小規模企業の存続が必要である。

しかしながら、経済の国際化による競争激化、人口減少に伴う消費の縮小、少子高齢化に伴う労働力・後継者不足及び自然災害の多発など、企業の経営環境は極めて厳しい状況である。このような中、中小企業・小規模企業が存続し、発展していくためには、まずは自らの自主的な努力及び創意工夫を基本としながらも、市、中小企業振興団体、大企業、金融機関等、学校及び市民が中小企業・小規模企業への理解を深め、それぞれの立場で力を出し合い、支え合い、まちづくりの一環として中小企業・小規模企業の振興に取り組むことが重要である。

よって、ここにこの条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、中小企業・小規模企業の振興について、基本理念を定めるとともに、各主体の役割等を明らかにし、相互に協力することにより、その振興に関する施策、取組等を推進し、もって地域経済の持続的発展及び市民生活の向上を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 中小企業・小規模企業 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項各号の規定による中小企業者及び同条第5項に規定する小規模企業者であって、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(2) 中小企業振興団体 商工会、中小企業家同友会その他中小企業・小規模企業の振興を行う団体をいう。

(3) 大企業 中小企業・小規模企業以外の事業者をいう。

(4) 金融機関等 銀行、信用金庫、信用組合、協同組合その他の金融機関及び信用保証協会をいう。

(5) 学校 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条の規定による学校をいう。

(6) 各主体 市、中小企業・小規模企業、中小企業振興団体、大企業、金融機関等、学校及び市民をいう。

(基本理念)

第3条 中小企業・小規模企業の振興は、次に掲げる事項を基本理念として推進されなければならない。

(1) 中小企業・小規模企業の自主的な努力及び創意工夫を尊重すること。

(2) 各主体が連携し、効果的な施策、取組等を実施すること。

(3) 市場原理及び適正な商取引に留意しつつ、経営資源の確保が困難であることが多い中小企業・小規模企業の状況に配慮した受注機会の拡大に努めることにより、地域経済の循環と活性化に資すること。

(4) 人材、技術、産業基盤、自然、文化、歴史、伝統等の地域資源の積極的な活用を図ること。

(市の役割)

第4条 市は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、中小企業・小規模企業の振興に関する施策を総合的に推進するものとする。

2 市は、前項の施策の推進に当たり、各主体の意見を聴取し、適切に反映させるとともに、積極的にその取組に関する情報を発信するよう努めるものとする。

(中小企業・小規模企業の役割)

第5条 中小企業・小規模企業は、基本理念にのっとり、経済的社会的環境の変化に対応し、事業の成長発展及び地域経済の循環を推進するため、自主的な努力及び創意工夫並びに中小企業・小規模企業同士の連携により、経営の改善及び向上を図るよう努めるものとする。

2 中小企業・小規模企業は、地域における雇用の創出及び人材育成、円滑な事業承継並びに意欲的に働き続けることができる労働環境の整備を推進するよう努めるものとする。

3 中小企業・小規模企業は、地域社会を構成する一員としての社会的責任を改めて認識するとともに、地域社会との調和を図り、暮らしやすい地域社会の実現に貢献するよう努めるものとする。

(中小企業振興団体の役割)

第6条 中小企業振興団体は、基本理念にのっとり、中小企業・小規模企業の実態を把握し、当該実態に即した経営の改善及び向上について積極的に支援するよう努めるものとする。

(大企業の役割)

第7条 大企業は、基本理念にのっとり、地域社会を構成する一員としての社会的責任を改めて認識するとともに、事業活動を行うに当たっては、中小企業・小規模企業の成長発展に配慮するよう努めるものとする。

(金融機関等の役割)

第8条 金融機関等は、基本理念にのっとり、中小企業・小規模企業の経営支援及び資金需要に対する適切な対応等により、中小企業・小規模企業の経営の改善及び向上に配慮するよう努めるものとする。

(学校の役割)

第9条 学校は、基本理念にのっとり、職業に関する理解を深める学習を通じて、児童、生徒及び学生の職業及び勤労に対する健全な意識の醸成に取り組むよう努めるものとする。

(市民の理解及び協力)

第10条 市民は、基本理念にのっとり、地域経済の持続的発展及び市民生活の向上を図るに当たり、中小企業・小規模企業が果たす役割を理解し、その健全な発展に協力するよう努めるものとする。

(各主体の連携及び協力)

第11条 各主体は、第4条から前条までに規定する役割等をそれぞれが適切に果たしていくため、中小企業・小規模企業の振興に関する施策、取組等に関する協議を行い、その実施について相互に連携し、及び協力するよう努めるものとする。この場合において、市は、当該協議の場を設ける等、各主体の連絡調整を行うものとする。

(委任)

第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、令和2年4月1日から施行する。

岩沼市中小企業・小規模企業振興基本条例

令和2年3月9日 条例第1号

(令和2年4月1日施行)